2012-11-20

東電のプラントデータ追加公開について

11月17日の福島第二原発(2F)モニタリングポストデータの「公開漏れ」がNHKの報道により指摘され,11月19日に早速更新されました.これにより10分毎の2Fの空間線量率のデータが公開されました(詳細は前のブログ).(注: 誰もが利用できるデータ公開のページの数値データからは漏れており,実際利用されなかった,という意味で,本ブログではこのように記載しましたが,意図されたされないによらず,実質未公開であったに等しいと思っています(未公開状態).)

しかしながら,3月16日の放射性物質の放出原因は未解明であり,できるだけ多くのデータから推察せざるをえないのが実情です.

東電は2012年5月に「福島第一原子力発電所事故における 放射性物質の大気中への放出量の推定について」という報告書を公表しました.そこでは8:30頃の福島第一原発(1F)3号機からの白煙と原子炉格納容器圧力の緩やかな低下傾向から,3月16日の放出は3号機由来であるとの見解が述べられています(p.9 表8).

今年の8〜9月頃,東電がDIANAコードによる解析に用いたであろうと思われるデータの出力図に疑問を感じました.p. 26に3月16日の分があります.これによると,どうも,これまでに私が集めて検討していたデータには載っていない点が存在するのに気づいたのです.はたしてそれが誤植なのかどうなのか,わかりませんでした...そこで,前のブログに述べたよう,9月末に福島のテレメータのデータを検討したところ,3月16日の正午頃には南側で空間線量の上昇が確認されており,データが存在するにもかかわらず公開漏れになっていた2Fの値に気づいたのです.

そこで,記載されているp.26の図を取り込み,東電のホームページで公開された数値データとスケールをあわせて重ねたのがここに示す図1です(この1枚の作業でも一苦労でした....).16方位をサイン,コサインで表現した1Fにおける風向きも示しています.11月19日に更新された2Fの空間線量もスケールを100倍にして載せています(1Fとあわせるためですのでご注意).
図1. 東電の2012年5月の報告書とこれまでHP上で公開
されていた数値データ,および11/19, 20に追加公開
されたデータを重ねた図.風向きは1Fの16方位.




東電のプラント関連パラメータ[ http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/pla/index-j.html ] にて,11/20に新たに追加公開された3月16日の1F2のプラントデータ(pdf, csv)は2点あります.これがまさに5月の報告書のp.26の図のみに,存在していた2点にあたります(図1中new1, new2で示す).いずれも,変化の傾向(データ欠落部を錯覚して直線で結んでしまう)よりも上に飛び出た値です.これが意味するところは,「その点から元の傾向に戻る時には,格納容器から気体が放出されたであろう,」ということです.ただし,どの時点で圧力が上昇したのか,あるいは上昇下降を繰り返していたのかは肝心の部分のデータが欠落しているのでわかりません(図1の[?????]部分).
 この報告書の図上の点の存在(データ公開ページには掲載無し)をもって,「公開していた」と言えるのか(11/20の東電の会見でそのように説明されたようす),あまり納得いかないですね...

特に正午頃の2号機の格納容器圧力データ(new2)では,400 kPa(4気圧)から40 kPa (0.4気圧)に低下しています.3号機の格納容器圧力の減少は3気圧から2.3気圧へゆるやかです.どちらが主要な放出かはもっと詳細に検討しないといけないのですが,1Fの空間線量変化(昼前後は陸に向けた風によってモニタリングポストに運ばれたと推測できる)は激しいので,いずれか,あるいは両方の格納容器で断続的に「何らかの放出現象」が起こっていたようにも推測できます.

風向きも変化していますが,そもそも連続あるいは断続的な放出がないと広い地域で風向きに敏感に応答することもないし,上昇量が大きいので,実際にその時刻に放出されたのではないかと疑われます(推測).

 更新された2F空間線量率の0:50頃の上昇は降雨時に放射性物質が土壌に沈着したものように見えます(推定:ピークのない崖のよう).10時頃のものは,そうではなく,放射性プリュームが通り過ぎた状態のように見えます(ピークが短時間で過ぎ,その後の放射線量があまり上がっていない).時間的には2Fの空間線量率と1F2号機の格納容器圧力にはあまり相関はなさそうです.むしろ,正午頃の格納容器変化は,1Fにおける空間線量の上昇と(偶然か必然かは不明)同じ頃のようにも思えます.その時風向きは海側に転換しましたので,2Fまでは運ばれなかったのかもしれません(推測)

8:30頃以降,1F3号機で白煙が観測されています.当時の記憶によると,放射線量が上がってないので,放射性物質の飛散ではい,と解釈したように思います(あいまい)が,データをみると,風向きが南・海向きだったので,1F3号機から西側1 km離れた場所では観測できず,むしろ2Fを通過したのかもしれません.陸向きの風になって1Fでも観測されるようになったと.------ このように考えると原発のモニタリングポストは,海上にも設置しておかないと飛散状況が把握できないでは,とあらためて強く思います.

3号機水素爆発,2号機の圧力抑制室の破裂音(推定)後もところどころデータが存在しているので,(絶対値はともかく)2号機格納容器圧力の上昇値は計器故障というわけではなさそうです(憶測).できれば,この間のプラントデータ,あるいは作業記録等が存在しないか,よくよく確認してほしいと思っています.

(2012.11.20 記)----  「推測」,「推定」が多くすみません.実際,少なくともデータがないと結論つかないのが現実です.....

11/20 東電の会見についてのまとめ(見つけたかぎり)
http://togetter.com/li/410682
http://togetter.com/li/410381




2012-11-18

東電の未公開データについて

2012.11.17 19時のNHKのニュースで東電に未公表データがあり,その未公表部分に空間線量率が大きく上昇していることが報道されました(NHK「かぶん」ブログ).もともと原子力・放射線が専門ではなかった私がコメントさせていただくにいたった経緯を含め,補足いたします.

福島第一原発(1F)の空間線量率は3/14の夜から16日にかけて,大きく4回上昇しており,その度に有意な土壌への放射性物質の沈着が観測されています(一度上昇して下降した後,ベースラインが大きく上がり,主にヨウ素131の半減期に従って減衰していっているようです).
-図1.  1F, 2Fの空間線量率(東電公開分)
- 今回入手された2Fのデータ
- 1Fでの風向き16方位をsin, cos成分で表現(オススメ)
*3/15の2Fの元データ(多分私の)ミスあり訂正(○部分)。

9月末頃,2012/9/21に福島県が公表した原発周辺25か所で測定された震災当時のモニタリングデータ(テレメータ)について記者さんから連絡があり,それを見てみました.
http://www.pref.fukushima.jp/j/post-oshirase.pdf
それには福島第二原発(2F)のグラフも含まれていました.私は当時16日の放出に感心があったので,既存の公開データと重ねてみたところ,公表されていなかったデータ部分(データがないものと思っていた)もグラフに描かれていることに気づきました.しかもその16日には空間線量が大きく上昇しています.その頃は南北でいうと南向きの風でした(1Fでは10:00より海から陸への風に)ので,その風上にある1F由来のものである可能性が高いと思われます。

風向きの16方位は,sin成分, cos成分にわけて表示すると,(なれれば)風のイメージがつきやすいと思います(手前味噌で恐縮ですが,オススメです).角度はx軸,すなわち陸から海に吹く方向を0度にとります(中高生でも直観が働くように).

データは間が抜けていると,つい空いた点を直線でつないでしまいがちです.しかし,たとえば現象が起きるタイムスケールが1時間だとすると,数時間とんだデータ点を結ぶのは慎重におこなわなければいけません.実験物理の基本なのですが,つい見逃してしまいます.炉内のどんな事象があって,それがどのような原因で放射性物質の飛散につながったのか,これは,突然日常を奪われた近隣住民の方々にとっては特に感心のあることではないでしょうか.

まだ他にもいくつか,得心のいかない部分があります.もう事故から1年8ヶ月もたっています.一刻も早く抜けているデータがまだあるなら,公表してほしいと思います.

特に,本件については,3/16前後の2号機,3号機の格納容器圧力の細かなデータ,および当時の運転記録,現場で作業されていた方々の記憶が鍵になると思います.16日の放出は,3号機の格納容器圧力が緩やかにさがっていったことと,8:30頃の3号機建屋からの蒸気を根拠に,3号機からの放出と推定されているようです.しかし,1Fでの空間線量の時間変化は大変激しく,より密な測定データが望まれます(2号機もよく見るべきです).

一般に,
  - 放射性物質(放射性プリューム)が通過すると上がってすぐ下がります.
  (希ガスであれば沈着しません)。
 風にのって伝搬していきます.
  - 雨がふっているところにプリュームがくると,ピークのない崖のような上昇になります.
 - プリュームが漂っているところに雨が降ると,雨にあわせて線量率が上昇し,一部沈着します.
 みたところ,16日の2Fでの急上昇は希ガス成分が主のように思えます(推測).

図2. 2011/3/16の2Fでの空間線量の変化
(公開分およびNHK報道分)




実は以前にも似たことがありました.2011年5月末頃に原子炉の詳細なデータが公開され,SRV開による減圧操作と南側の放射線量の変化に強い相関を見出すことができました.それ以前のデータからはまったく想像もできないようなことでした.

その時は事故時の混乱など,いろいろな経緯があって,公開が遅れたのだろうと思いましたが,今はもう1年8ヶ月もたち,東電でもDIANAコードを用いて当時の分析をされてきているのですから,当の東電にとっても必要かつ重要なデータのはずです.今回は,正直,強い憤りを感じました.このために,どのくらいの住民の方がその日空間線量が急上昇したことを知らずにおられたのだろうか,何人もの研究者がミスリードされたのだろうかと....


私自身,今現在は本職(プラズマ・核融合)が立て込んでいて,なかなか今現在,データの分析に手がまわりません(能力不足,要領悪さは時間でカバーするタイプと思ってますが,もう飽和状態に...).私でなくとも,若手の研究者であれば(もちろん若手でなくてもいらっしゃると思いますが,概してそうかと),このようなデータ処理は得意な人が多いと思います.事故調査委員会に,重鎮の先生方だけでなく,データ分析をやってくれる若手実働部隊が積極的に登用されれば現象の解明につながると強く思います.もちろん若手が未熟なのは当然ですが,分野の将来を担って立たんとする人材をこういう責任のある実践の場で育成することも重要な責務に思います.

      (2012. 11.17-18 記)
関連ブログ:http://plasmankado.blogspot.jp/2012/09/ayearhalf.html
余談:放送局のグラフィックの技術,ホントに羨ましいです.


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追記(11/18):
 データとしては当時から存在していた,という情報をいただきました(@nogucci 様).
  http://twitter.com/nogucci/status/269963721328185344
 「経産省「地震被害情報(第26報)(3月16日14時00分現在)及び現地モニタリング情報」
 http://www.meti.go.jp/press/20110316010/20110316010.html  の   
 http://www.meti.go.jp/press/20110316010/20110316010-3.pdf
ファックスのようです.私自身は東電,文科省,自治体の数値データを見ていたので,ノーマークでした.pdfからデータを移し替えるだけでも四苦八苦していて....
 東電と保安院の報告は目を通していましたが,正直,その報告書内の数値までは手が回りませんでした.やがて本業がまわらなくなってきて....
 当時はデータの管理体制が混乱していたであろうことは想像に難くないですが,その後のどこかの時点で,何かの機会で,どこかの機関(人)で振り返ってチェックできていればよかったのかもしれません(自戒を込めて).
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追記(11/20)
   11/19に東電の2Fのデータが刷新されたようです(まだ私のデータベースは更新してませんが).
大変迅速に対応されて,よかったと思います.公開ページにはすべて記載されていると(どうしても)思い込んでしまいますし,新たにに解析を始める人たちは,このページからスタートするわけですので,他にも抜けているデータないか注意いただくことが重要と思います.私も注意したいと思います.
 本ブログの導入に用いた図1のデータで、5/15早朝の2Fのデータが(おそらく私のミスで)明らかにおかしい部分がありました(PDFからのコピー時なのか,いまとなっては検証不能).○部分で示しています.差し替えさせていいただきました.あらためて時間をみつけて再度クロスチェックしたいと思います.
 なお,福島テレメータの数値データ公開,東電のデータ更新は上述の記者さんの働きかけに負うところが多いと思っています(... て言っていいのかな? と思いつつ....).

2012-10-09

WordPerfect Mac 日本語版のPDF化


 核融合を目指したプラズマ中の乱流のレーザー計測に関する学位論文執筆から幾年か経って、電子版が主流になってきたので、自分もPDF版を作成したいと思っていた。ところが、この10数年でコンピュータ環境がかなりかわってきて、なかなか難しい状況であった。

○原版の作成環境
 Macintosh OS 7.5 であったように思う。PowerPook170を用いた。
 本文:WordPerfect 3.1(J)  (WordPerfect社、Novel社、Corel社と変遷) 
 図: ClarisDraw  (Claris社)
主なプログラミング言語はThink C およびその後継の Symantec C++であり、Macintosh標準のPICT形式でグラフィックを保存するようにプログラムを作成し、ClarisDrawにペーストした。グラフ作成にSynergy Software社 KaleidaGraphやwavemetrics 社Igor Proを用いた場合でも、上記同様にClarisDrawにペーストし、色の編集やキャプション、ページ番号の追加をおこなった。

○作成方法
 文章と図と表を別々に作った。文中に図を貼り込むDTPソフトもあったが、高価で学生には手が出せなかった。手作業でページをあわせ、偶数ページと奇数ページに仕分けした。まだソーター機能はおろか、自動フィーダー付きコピー機も現れていない。両面コピーは頻繁に紙詰まりを起こしていた。
 そこで、両面コピーには、まず奇数ページをコピーし、次に再度方向をそろえてフィーダーにセットし、偶数ページをコピーすることにした。A3用紙に2面同じページものを並べ、地元知人の印刷業者にお願いしてそれをA4に裁断し、製本してもらったように記憶している。

○その後のパソコン環境の変化
 Macintoshでは、いわゆる68k CPUからPowerPC搭載、さらにIntel搭載へと変化し、過去のソフトウエアが次第に使えなくなってきた。主流となるワープロソフトもかわり、日本語フォントの互換性も失われてきた。WordPerfect もClarisDrawも販売、サポート終了となり、なかば諦めていた。

 本作業を行おうと思い至ったきっかけとなったのは、ClarisDrawのファイルが編集できるIntaglioというソフトの発売、および英語版WordPerfectを動作させるため、OS X 10.6 Snow Leopardで動作する SheepShaverというオープンソースのPowerMacエミュレータとバンドルされたパッケージ(WPMacPPC)がリリースされたことである。
 SheepShaverは単独でも入手可能であるため、当初、自分が所有する昔のOSをそれにインストールすればよい、と思っていたが、実際にやってみると一筋縄ではいかなかった。以下問題点の具体例を挙げる。
- MacBook Pro (13 inch LCD, Intel Core 2 Duo, 2.53 GHz) , OS X 10.6.8 SnowLeopard を使用。
- 動作には、旧PowerMACのROMの情報が書かれたファイルが必要とのこと。それを抜き出すソフトは少なくともClassicサポートされている旧MACのOSでしか動かない。
- WordPerfect (WP)3.5e英語版では日本語動作が不安定。
- WPに付属するSheepShaverにバンドルされているOS7.5は英語版であり日本語表示がされない。
- WPバンドル版はROMもそのディスク内にある(ソフト経由でのみ閲覧できる)
- ソフトウエア内に確保されていたDiskの大きさがファイルサイズギリギリであらたなOSを入れるスペースはない。

○具体策
 そこで、WPバンドル版のSheepShaverのエミュレート機能のみ使い、SheepShaverを立ち上げた状態で、別のインストールディスクを1GB程度確保し、そこに日本語版OS9を入れることにした。そこにWordPerfect(J)をインストール。内部にディスクスペースを確保する仕様のため、この作業の結果、WPアプリケーションの容量が大幅に増大。

 OS9が立ち上がることが確認されたが、 再度別の問題が明らかになった。OS9にはそれ以前では標準的であったリュウミンライトというフォントがバンドルされていない。学位論文はこのフォントで書いたので、フォントが変わってしまい、結果としてページ区切りがバラバラになってしまう。
 そこで、後にOS7.5.1 CDからフォントのみインストールしたところ、対応できた。
 日本語WPは以前より保管しておいた3.1、 数式フォントとWP ビットマップフォントを追加した。

○具体的PDF化作業
 共有ディスクを定義することで、OSX側とエミュレータ側とで同じデータにアクセスできるが、もともと日本語環境のエミュレータではないせいか、日本語が文字化けしている。これはどうしようもなさそうである。
  WerdPerfectやClarisDrawのフィルタ名が文字化けしていると正常に機能しない場合がある。その場合、面倒だが手動でMacOS上でファイル名を書き換える。OS XでStuffitに圧縮し、MacOSで解凍すると正常になる場合もあるが、できない場合もあった。

 以前使っていたAdobe PDFwriterを機能拡張にいれて、プリントコマンドでPDFを作るようにした。圧縮などの設定がデフォルトの場合、previewで開いたときにひどく文字化けする。そこで、圧縮なし、フォントを全部埋め込んでPDFをつくると、ほぼ見た目通りになった。
 ただし、このPDFファイルをAcrobatで開くと、数式や一部のフォントが化けていることがわかった。WordPerfectは数式機能が先駆的であったが、これで書かれた式は特に文字化けが顕著である。
 そこで、previewでいったん、「別名で保存」を行うことにした。これで無駄な埋め込みフォントなどが整理されて、見た目どおりになるようである。
 あとは、仕上がりを見ながら、原文の微修正を行い、確認した。たとえば、| | はリュウミンライトフォントでは上下にわかれてしまうので、timesフォントに直す必要があった。

 このようにして、WordPerfectの原稿をPDF化し、それにClarisDrawファイルをIntaglioで修正してそれもPDFに書き出し、Adobe CS4パッケージに含まれるAcrobat 9 Proで統合、ページの再配置を行った。
 時々、Intaglio で「メモリ不足」として開けないファイルがある。その場合、MacOSのClaris Drawで再編集してみる。それでもIntaglioで開けない場合には、ClarisDrawでPICTに保存する。それをIntaglioで開くことができるが、編集はできない。あるいは、ClarisDrawからPDF化する(フォントはMacOS対応のままになる)。

余談:
英文であれば、WordPerfect3.1(J)をRTFに保存してそれをMS wordで開くとギリシャ文字、数式を除いてほぼ再現できるようである。日本語は変換されないようなので利用できない。
○作業後記:
 書物の場合、保存状態がよければ100年あるいは1000年でも保存可能であろう。しかし、電子ファイルは、そのフォーマットやフォントが変更になると、いつまで互換性が保たれるのか、甚だ疑問である。実際、たかだか数年のうちに読めなくなってしまったフォーマットも少なくないであろう。今後の電子ファイルの変遷にも注視していきたい。

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<手順のまとめ>
- WPMacPPCのインストール
- その中のSheepShaverより、別ディスク領域を確保
- そのディスク領域のフォーマット後、MacOS 9.0(J)をインストール
- フォント「リュウミンライト」を(おそらく)MacOS 8以前のCDからインストール
SheepShaverの共有ディスク機能で必要ファイルをコピーする
- WerdPerfect 3.1 (J)をコピー、フォント、初期設定をコピー
- Claris Drawのコピー 
- PDF Writer(プリンタ)を機能拡張にコピー OS9.1以降では、PDF Writer(ver 4?)が使えない。このあたり、対応OSや機能拡張などの条件が複雑であった。
- Intaglio にてClarisDrawファイルを開く。できるかぎりフォントをリュウミンライトからMS 明朝に入れ替えておくほうがよいであろう。
- WP文書はPDF WriterでPDF化、ClarisDrawファイルはIntaglio経由でOS XでPDFに保存(プリント設定で)し、それをさらに、OS標準のPreviewで別名で保存する(するとAcrobatで数式が化けない)。
- OS XのAcrobat Proで本文、図、表のPDFをれぞれの統合、ページのソート。

------同業者向け-----------------------------------------------------------------

○博士学位論文(PDF)  (1997年2月 九州大学)
  「レーザー位相差法を用いた高温プラズマ不安定性の実験的研究」
短縮URL [ http://bit.ly/KadoPhD ]   2012年9月29日(PDF化)
 100ページ弱で、わずか2MBに。。。
(当時は等高線の描画など、重かった印象だが、所詮線描画。。。。)
  -- 等高線を書くプログラムもアルゴリズムにもとづいて自作。
論文データベース:
 http://mars.lib.kyushu-u.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000002GAKUISYOSI_7271


参考:
○本学位論文の内容をスペクトル計測の観点からまとめたもの
「レーザー位相差法(LPC)によるプラズマ密度揺動スペクトル計測の実際」
 プラズマ・核融合学会誌 76(9), 889-902, 2000-09-25
 http://ci.nii.ac.jp/naid/110003825515    (CiNii)
 http://www.jspf.or.jp/Journal/PDF_JSPF/jspf2000_09/jspf2000_09-889.pdf (JSPF)

2012-09-16

- 小学校から使える元素周期律暗記表(案)-

 最近は,「元素」ブームなのだろうか.

文科省サイトでは「一家に1枚 周期表」が公開されている.
筆者も科学博物館の元素展「元素の不思議」に足を運んでみたが,けっこうマニアックで面白い.
 小学生でも,この規則的な並びと名前はけっこう興味を引くようで,覚えようとする子も少なくないであろう.

 20までの,水兵リーベ....であれば,中学生以上の皆が知っている語呂合わせを紹介できる.ところが,現在よくテレビなどででてくる元素には,チタン,ニッケル,銅,銀,金,バリウム,さらには,原子力や放射線分野で重要な,セシウム,ヨウ素,ウラン,プルトニウムなどなど,,20まででは追っつかない.

 そこで問題に直面する(大袈裟?).大学受験生向けには,様々な覚え方が提案されており,筆者も予備校時代に覚えたのだが,それらは,子供に教えるにあまりにはばかられるような言葉の羅列で.....(笑)

 ならば,はじめから小学生(の女の子)が大声で暗誦しても問題なさげなもの,という条件付きで考案してはどうか...... というわけで....
 
具体的な作成基準・方針は以下.
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<原則>
- 有名なものがあればそれを利用あるいは,一部修正
- "できるかぎり" 品性を保つ(笑)
- 個々の周期や族だけでなく,全体を見渡せるような暗記表にする.
- なるべく科学的に意味のある分類にする.例えば遷移元素(3-11族)と亜鉛族(12族)は横,亜鉛属以外の典型元素(1, 2, 13-18)は縦列.なお,12族(亜鉛族:Zn、Cd、Hg)は典型元素に分類されるのが一般的だが,遷移元素に含むべきとする説も少なくない.)
- 無理に語呂にする必要はない(こだわりを捨てる).
 (少ない組み合わせなら子供はすぐに覚えられる.響きや調子はよいほうがよい.)
   表中[ ]内の文字は読まない(情景明示や説明のために載せた).
- アルファベット,スペル由来,ローマ字はなるべくさけ,日本語名を基本とする.
  (Cl:塩素のみ「クラ」を当てた.水兵リーベ..と同じだからご容赦)
- どの音がどの元素に対応するか混乱をさけるため,つなぎの言葉を少なくする.
- ランタノイド系以降は読みも複雑なので,むしろそのまま頭部分を採用する
   出だしは「蘭競りのプラン(計画)」で覚えても良い.
- アクチノイド以降で人名が対応するものは順番の暗記よりも人物に親しんでもらう.
  出だしは「アク取りのプロ(名人)」から.
(アク取り名人を意識すると「プロ」とランタノイドの「プラン」を混同しない?)
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<覚えるため,間違えないための工夫と注意>
- なるべく1つの語呂に複数の元素が対応しないようにしている.
  [Ti = 散った, Fe = 鉄,  Tc =てくネ, Te = てっ, Ta = たん, W = たんグ,  Tl =たり ] とあてる.   
         (FeとTeは近いが,Feはそのまんまなので迷わない)
- 間違いやすいものもある.以下は特に注意.
 [V- Ba = ば, Ni-Nb =に, Na-Pb = な] は重複.
    [Li = リッチ, P =リ] 
 [Se = せ,Cs = せし]
 [Ru = るて, Lu = ル(ッ)テチ]
    [Rn = ラン, Ra = ら]  (縦では希ガスと,バリウムラジウムの並びなので語呂がよい)
   ( [Ga = が,Ge = ゲルマ] )   Gで覚えるわけでないので,誤解すくないかな?.
- 縦横のチェックポイントを入れている(赤字).
         31-36は横に読んでもなんとなく文章になっている(21-30に続けても).
   銅 - 銀 - 金 の縦列は覚えやすいので確認に.
   ランタノイド,アクチノイドでは,Eu(ヨーロッパ)とAm(アメリカ)でチェック.
(今話題のレアアース(希土類:17元素) "Sc-Y-ランタノイド" も確認)

(2017.1   追加)
81-86;   縦とのクロスチェックにも.
 足りん-な-ビッ(クリ)-ポン-阿修 羅どん    //  -- 厚いラードでもよかったかな^^.
  Tl       Pb    Bi             Po       At    Rn
 [ヒ素As (arsenic) と アスタチンAt(astatine) 間違えないよう] 

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<運用>
言葉の解説や場面のイメージなど,始め多少は大人やあるていど把握できている人のインストラクションが必要に思います.
   * なお,これまで数え切れない方々が語呂合わせを作ってこられたと思うので,オリジナルと思っていても,偶然の発想の一致等もあるかと存じます.教育用途ですので,ご容赦いただければ幸いです.

(2017.1 追記)
概ね目安として,水兵リーベ,,を覚えたあと,
(1) 縦8つ,
(2) 縦を確認しながら横に54のキセノンまで,
(3) 95のアメリシウムまで,
(4) あと趣味^^で,残りを制覇,
     と進めばいいと思います.(1)は受験にも役に立つでしょう.(2)までに日常目にする元素が大部分含まれると思います(+タングステン,白金,金,水銀ぐらい).(3)まで覚えれば,原子力・放射線材料まで網羅.これで無敵です ^^/ .(4)までいくと仙人の世界(笑)ですが,人名くらいは知っておいて損はないかもしれません.

注:実は,水兵リーベは ドイツ語Liebeだったり,B, C, N, O, Si, P, S, Cl, Ar, と半分近くが元素記号との対応なので,小学生には向かないかもしれない.一列目は「水兵さん」とだけ伝えて,(1)の後に族の順番をあわせながら水兵リーベの節を教えるのも一案かもしれません.

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<ダウンロード>
今後マイナーな改訂はおこなわないとも限りませんが,公開してみることにしました.
(引用: © @plasmankado, © S. Kado  等にてお使いください。多少の改編はかまいませんが、あくまで「小学校から使える品性を維持いただきますようご理解願います。)

(当初リンクにしてましたが,仕様がかわり?使いにくくなったので,直接表示にしました 2024.4)

(1) 小学校から使える周期律暗記表 [暗記用] 
小学校から使える周期律暗記表(暗記用JPG)

(2) 小学校から使える周期律暗記表 [練習用]

小学校から使える周期律暗記表(練習用JPG)

 

配色は,子供向けに,元素毎にユニークなキャラクターを対応させた「科学キャラクター図鑑 周期表―ゆかいな元素たち 」(エイドリアン・ディングル (著), サイモン・バシャー (イラスト), 藤田千枝 (翻訳) ;玉川大学出版部)を採用しました.あわせて利用し対応づけることで,記憶が定着しやすいのでは,と思います(出版社の回しもんではございません ^^; むしろ) ------>  玉川大学出版部さん追加出版しませんか?  --- まあ売り込みにでも行かない限り目に止まることはないですか ; 笑 .

 我が子は周期表だけみて,本の中身は読んでないようです(教育は長い目で.)... 18族(希ガス)のキャラが全部同じ形だということに気づいて「ポアポアちゃん」と呼んで気に入っています.
 いくつか初案から修正(方針にあわせた改善)しているのですが,初案のほうがいいと言ってます.最初に覚えるものの印象が強いんでしょう.

 たまたまこのページを目にし,実際に使ってみられたかた(生徒さん,親御さん,先生?)がおられましたら,感想など興味あります.

本ページ 短縮URL [ http://bit.ly/KDptable ] 
参考 - 周期表 wikipedia
2013.4.23   解説微改訂.
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2017.1.7    ニホニウム命名(2016.11.30)を機に改訂.
112 コペルニシウム(Cn):2010.2.19 (コペルニクスの誕生日)
114 フロレビウム(Fl)  2012年:ドゥブナ研設立者ゲオルギー・フリョロフ氏
116 リバモリウム(Lv) 2012年:アメリカの研究所ローレンス・リバモア国立研究所
 はすでに命名されてます.

2016.11.30  IUPACによる発表
113  ニホニウム (Nh):理化学研究所,森田浩介博士らのグループ
115  モスコビウム (Mc):ドブナ研所在地であるモスクワ州(モスクワ市ではない)
117  テネシン (Ts):テネシー州;ハロゲン元素(17族)の末尾 -ine
118  オガネソン (Og):ユーリイ・オガネシアン氏;希ガス(18族)元素末尾 -on
https://iupac.org/iupac-announces-the-names-of-the-elements-113-115-117-and-118/

113-118 の覚えかた(案)は
 [日本(の)風呂 もス リッパ でねおっかねーし]
        Nh          Fl    Mc       Lv      Ts           Og

参考:幻のニッポニウム。1908年に43番元素として発表されたが,実は1925年に発見されることになる75番のレニウムであった(取り消し).当時X線分光装置が入手不能であったため,同定ミス.一度取り消されたものは混乱を避けるため使えないルール.
43番元素は天然には存在せず,1936年にサイクロトロン加速器で合成されたテクネチウム

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2012-09-11

- 震災から1年半 -

震災から1年半が過ぎました.生活,物の考え方,科学や技術に対する意識がずいぶん変わったように思います.思うようにいかないことも,思うようにならないことも,思うようにできないことも,また思いも至らなかったことも多々ありましたが,まだ事態は収束しておらず,自分の出来ることを粛々とやっていくより他にないと思っています.

 自分自身はもともと原発や放射線の専門ではなく,このような事態になるとは思っていませんでした.なんとなく,安全神話というか,なんとかなる,してくれるもの,という意識がありました --- 3.14の3号機水素爆発の頃までは....(2度目が防げなかったことにショックというか,呆然というか....)

 専攻では,震災数日後に対策・検討会がつくられ,ほぼ連日会議がありました.東大原子力も東海村の施設が被災して,大変な様子でした(そちらの方々は家族を犠牲にして施設に泊まり込み,法令に従って放射線モニタリングを続け....).原発についてはこちらでも対策案なども検討しましたが,現実は,東電や保安院等の現場ですでに,ありとあらゆる対策案が検討されており,外野からの擾乱はかえって迷惑になっているのでは,との印象となり,むしろ長期的な工学教育などを重要視すべきでは,との方向にシフトしていきました.わかっている範囲だけでも積極的に情報発信すべき,という意見もありましたが,それも叶わず,各教授個人は政府の委員会など,奔走しておられたのですが,(はっきりいうと)組織として民衆側に 立つ(安全側でも危険側でもなく,今わかっている科学的見地から,人々の不安を和らげ,判断の一つの根拠を与える役割を果たす,という意味です)ことができませんでした.いまでも悔しく思っています.

距離は概算,Kita Ibarakiが正しいつづり
(当時のまま 2011.3.15 23:00頃作成)
3.15の早朝,東海村の施設で放射線量が上がり,法令に従い東大から文科省へ通報しました[原子力災害特別措置法に基づく10条通報].私は茨城県の公開データをみて,15日の(多分)夜までには,風向き,速度から,早朝の上昇は福島での前日夜の事象由来,3回"なにか"がおきた,と判断しました(専攻内にはメールで伝えていました).(後に2011年5月に東京電力がプラントの詳細データを公表し,その「何か」が,原子炉の減圧操作と関係しているのでは?と推察しましたが,確信はもう少し後)でした.はっきりしていることは,この事象は15日早朝の2号機破裂音(報道)の前(18~21時頃)のはずだということです.以降,各地の空間線量率と公開された原子炉圧力などのパラメータの記録,分析を始めました.

  (恥ずかしながら)SPEEDIの存在は確か3月20日頃知ったように思うのですが,そのような大型計算機による情報がなくても,公開情報だけでどこまで予測ができるのか,そのようなことも念頭にありました.SPEEDIの情報をもとに逃げる方向を変えるのは現実的ではないでしょうが,少なくとも,プリューム通過中なら屋内退避,雨の予報がでていれば保育園などの小規模な園庭や植え込みのビニールシートカバーぐらいはできたのでは,と思いました(耕地や山林は難しかったと思います).----- 実際は事が起きないと何とも言えない部分があるもの事実です.

 そういう経緯で原子炉,放射線,放射線防護(ICRPも)等をはじめて本気で勉強することになりましたが,半面,自分の研究(プラズマ・核融合)は半年以上完全にストップしてしまい,十分な学生指導もできぬ状態で,時間が過ぎていくことになりました.
 ただ,原子力に近い分野の科学者であり人事では済ませられない,医療従事者の夫であり緊急対応時(余震などで)にはサポートする心構えでいなければいけない(実際はあまり役にはたたず),小さい子供(当時小1)の父親であり,この娘を守ると同時に,物事を正しく伝えなければならない責任(のようなもの)を感じたことも荷担したと(今になって振り返れば)思います.

 震災後しばらくたって,自分が行ったデータ分析をいくつか個人のtwitterやtwitpicsに投稿してみました.googledocsに少し詳しい説明も書いたりもしたのですが,(私が不慣れなせいもありますが)リンクがちょっとおかしくなっているものもありましたので,今後時間をみつけてすこしずつこちらに移行,再掲していこうかと思っています(もう古くなった情報もありますが,記録を兼ねまして).      (2012.09.11 記)

2012-09-04

- 小学校3年生の夏休み自由研究(親の視点で)-

<§1 自由研究は誰の宿題?>
 夏休みの自由研究の題材選びは,子供にとってというより,むしろ親にとって(笑)最大の懸案事項のようである.
子供が独力ですべてを行うのは,到底無理な話,高校生大学生だって満足のいくレポートを作れるかどうかは怪しいのではないだろうか?

 我が家もその季節となった.インターネットで探せば,いろいろなアイディアがあり,かえって迷う(笑).科学館の理科教室や工作教室もあれば,霞ヶ関官公庁の子供向け一般公開もある.田舎育ちの私にとっては,なんともめぐまれた環境である(むろん当の本人は自覚ない:笑).
 昨年(2年生)は,朝顔(だったかな?)の観察日記として,数枚の絵日記を書いたように記憶している(違ったかも .なんかの発芽だったかな? --- 親失格..).
 さて今年はどうしたものか...と,あるとき,セミの抜け殻をいくつか見つけ,背中の割れ方が,少しずつ違っていることに気づいたようである.娘は,はじめ,オスとメスで違うのかな?と思ったらしい.

そこで,これはチャンス(!)と思い,夏休みの自由課題として,セミの抜け殻について調べてみてはどうか?と釣ってみたら,食いついてきた. 
 以下のリンクがその宿題
本文末にも,埋め込んでみました.ただし,名前,場所は伏せています)
学校には,A3のケント紙4枚を2つ折りにして,A4で16ページ分のブックレットにしたものと,実際に採ってきた抜け殻の標本(みたいなもの)をお菓子の箱に並べたものとを合わせて提出.

<§2 方法>
 さて,問題は何を調べて,何を主張するか,である.インターネットで検索すると,「セミの抜け殻による種類と性別の見分け方」の解説がみつかった.そこでそのページをプリントアウトし,見分けられるか促してみた.
 [金沢市のページ]

種類は背中の割れ方ではなく(大人の石頭では"当然"ですませてしまうでしょう),主に触角でみわけられることに感動したようで,興味をもって一匹ずつしらべていった.触角で見分けるのは老眼初期の親にはけっこう辛い(笑).

東京都内で,場所範囲をきめて,8月中旬から2日連続,1週間おきに3クールで合計6日間,合計130匹ぐらいをあつめた.多くはミンミンゼミで,ついでアブラゼミ,ツクツクボウシがわずか数匹.1日目は夕方に全部あつめ,2日目は朝にとった.つまり,2日目は,その夜にでてきたものだけの数を数えられることになる. ---- もちろん,こんなことは,子供が思いつくようなものではなく,様々な誘導尋問で(笑),そっちへ持っていった.

親のインターネット調査では,東京ではアブラゼミが最も多いが,場所によってはミンミンゼミが優位となるところもある,ということである.オスメス比は1:1であることが常識のようだ.

そういった背景を知った大人の目からみると,このデータが意味することは
- 調査した場所は,まさにミンミンゼミ優位な地区であること.
- メスのほうが多いこと
- 連続する2日間の数があまりかわらない.数日分溜まっているのでは,と思っていたがそうではなさそう.
- ツクツクボウシ(の抜け殻)は極めてすくない.
- 第1クールが特に多い.気温などと関係するのだろうか?
など,面白い結果となっている.130ぐらいの個体数なので,定性的な統計精度としてはわるくないだろう.

 お盆に京都に行ったので,そこでも探してみた.場所による違いがあるのでしらべてみては,と(親が:笑)思ったからである.
 京都のその場所にはクマゼミがみつかり,ミンミンゼミはいなかった.

<§3 ここからが大変>
 さあ,問題は,これをレポートに仕上げることだ.実際のレポートに示したよう,以下の見出しをヒントとしてあたえ,その内容を考えさせることにした.
  1. 何の研究か
  2. なぜこの研究を選んだか
  3. セミの種類の見分け方
  4. オスとメスの見分け方
  5. 場所
  6. 観察方法
  7. 全データ・表
  8. 円グラフ (種類・オスメス)
  9. データからわかること
  10. 参考:京都のデータ
  11. 感想 思ったこと,次に調べたいこと
 ここだけ見ると,学術論文の構成とさして変わらない.こういった「考える筋道」を体験してもらうことも自由研究の利点ではあるが,同時に,自由な発想を奪うのではないか,というジレンマもある.

 ともあれ,ひとつづつ,まず,対話のなかで質問に答えさせるように誘導して,それを下書きとして書き下させるのだが,これがまあ大変(笑).
 例えば,京都のデータ.「場所による種類の違いを調べてみたかったから」というところにもっていきたかったが,断念(笑).「京都にクマゼミがいるかどうか知りたかったから」という発想から抜けない.調査時は,クマゼミがいることを知らなかったはずなのに,結果をみてしまって,その後時間がたって,夏休みが終わる直前に(笑)レポートに書こうとすると,思考の筋道がもう混乱してしまっているのだろう.
 抜け殻を取ったその場でメモ,下書きをさせることが重要だ,と感じた.

 さらに問題なのは「感想」.単におもしろかった,楽しかった,という「子供の純粋な気持ち」は,レポートとしては「バッテン(笑)」です.ですが,そこから何を学んだか,とか,世界観,自然観が変わったか,とかそんな「お利口さん」な文章を書かせたい邪念に満ちた(笑)親心は到底通じません.

 実際,セミの鳴き声を聞いて,どんな種類がいるのか,興味をもったり,旅行にいったときに,調べてみたい,と言ったり,取っているときには,なにか一皮むけたような印象ではあったが,その時期を逃すともうすっかり忘れてしまうようだし,文章にするのはさらに困難(まあ,大人でも大変といえば大変).

 「次に調べたいこと」についても,場所をかえて調べる根拠が「ミンミンゼミの割合」と書かせたかったし,そんな相談をしていたのだが,いざ書くときになると,いつのまにか,「ツクツクボウシがみつかるかどうか」にかわって,そこから発想が離れられない.--- 終わりのほうで,ツクツクボウシをみつけた喜びが強すぎたのかもしれないけれど..... この部分は,読書感想文が苦手なことと共通するように思える.


<§4 親の立場での一考>
 このような親による娘の観察記録から,自由研究を「研究らしく」行うのに必要な素養と能力が見えてきたように思う

(1) 背景:まず, 親は,子供が研究背景を知らない,ということを認識しておかないといけない.研究背景がないと,動機や方法論がはっきり決まらないのは確かだ.しかし,背景がない状態で,あれこれ考えさせるのは,子供の論理的思考力や想像力をはぐぐむよい機会なのでは,とも思う.

(2) 調べ物:インターネットで調べれば,今はすぐに回答が転がっている(玉石混交).親が調べてあげればあっという間,最短距離である.いわゆる「情報教育」も導入され,子供でもやりかた覚えればすぐやれるかもしれない.はたしてこれは好ましいことなのだろうか? 以前は,百科事典や昆虫図鑑で調べていたでしょう.一つのことを調べるまでに,その途中で,いろいろなページを眺め,関心を持っていった記憶がある.時間はかかるけれど,それで得るものも多いだろう.

(3) データの見方:どこに着眼するかは,洞察力を養う訓練になろう.対話式でうまく誘導していってはどうであろうか..

(4) 算数:グラフにしたり,パーセンテージを出せるようになりたいものだ.この自由研究では,近い値にまるめておおよその割合で円グラフを書かせた.百分率や割合の概念が定着していれば,電卓を使わせるのもいいのかもしれない. 

(5) 線やグラフ:我が子に限らず,この頃の子供は,まだ表の罫線や円グラフなど,スムーズには書けないと思う.親のほうがついイライラして,かわりに罫線だけ引いてあげたりしがちではないだろうか? 物差しで線を平行等間隔に引くのも大事な勉強だ,と腰をすえて見守ることも必要だと思う.

(6) 文章力:思ったことを論理的に表現できる能力が必要.このページで「何を主張すべきか」ということを把握して書かないと,思いついたことばかり書いて支離滅裂になってしまう.一言感想文や日記がいい練習になるかもしれない...が,苦手な子はその練習自体が苦痛....

(7) 漢字:3年生になって,習ってない漢字はたとえ知っていても書かなくなってしまっているような気がする.1~2年のころは,いろいろ知りたくて,自分で辞書をひいたりして楽しんでいた.今は「書ける?」と聞いても「知らない,どう書くの?」ではなく「それはまだ習ってない」と返ってくる.新しい漢字に出会った時が,それを学ぶチャンスだ,ということを意識付けることが重要に思える.(なんといっても母国語なのですから....)

<§5 おわりに>
 自由研究は,子供のため,というより,親が子供の全体的な達成度(=現実:笑)を知るいい機会でもあるのかもしれない.通知表の成績評価は,その学年その科目における相対的な達成度の指標なので,一つの課題を仕上げるのに(いわゆる「生きる力」),個人個人の能力のバランスの中で,どの項目が不足しているのか,知る機会はほとんどない.我が子の場合,他の項目にくらべ,(6)の文章力がかなり不足していることが,あらためて認識された.


<あとがき>
 これまで記したよう,いろいろ思うところはありますが, ただまぁ,興味をもって楽しく調査したこと,最後まであきらめずにがんばって完成させたことは認めてあげたいところです ----  親心として
 (それに他の子の課題をとりあげて評価して,いいたいこと言うなんで,とてもできませんから,ありがたいといえばありがたい --- 思った時に書き記しておかないと,記憶が薄れますからね...私も...)

 ちなみに,子供は夏休みでも,親は仕事があるので,お盆休みや週末を何日も費やして,付き合い,やっとここまで,って状況でした.完成は始業式前日の夜10時過ぎ頃.「完成日を書きたくない!(笑)」ってことで,8月ってことに.マンガにでてくるような夏休みの宿題騒ぎでした (^_^;) .       (終)

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追記(2014.8): セミ自由研究の続編ともいえる, 
- 小学校4年生の夏休み自由研究(親の視点で)- 
http://plasmankado.blogspot.jp/2014/08/blog-post.html
実施より1年遅れになりましたが,まとめてみました.セミの鳴き声の周波数にも着目(...するように「親が」話題を誘導した...). 

2012-08-05

- 減圧沸騰(Flash Boiling)とは -

減圧沸騰とは,圧力が下がると沸点が下がり,結果,低い温度で沸騰が始まる現象です.減圧沸騰に関連した現象は
- 富士山頂では90℃でお湯が沸いてしまって,おいしい御飯が炊けなくなる
- 真空にすると水が沸騰することを利用した真空凍結乾燥「フリーズドライ」
などが,よく知られています.沸騰に伴い,物体がもっている潜熱が奪われるため,温度が下がります.よって,条件によっては凍ってしまうこともあります.

では,逆に圧力を上げると,沸点はどうなるでしょうか?
実は沸点が上がっていきます.缶詰を加熱すると,内部は沸騰してなくても内圧があがり,破裂する危険が知られています.お湯をわかして100度で沸騰すると,100度のままなのは,沸騰によって奪われる潜熱と沸騰させるための加熱量が平衡するからです.
しかし蒸気の逃げ場がなく,圧力が高くなると,100℃以上に温度が上がります.圧力釜もその原理です.ですので,缶を火にかけるときは,"あらかじめ"蒸気を抜くための穴をあけておかないといけないわけです.すると加えた熱が沸騰に使われるので,水分がなくなるまで100℃で維持されるわけです.

福島原発事故では逃がし安全弁(SR弁, SRV)によって原子炉圧力容器(PV)の蒸気の圧力をサプレッションチャンバー(SC)に逃がし,凝縮(温度が下がることで水に戻る)することによって,PVへの注水を可能にし,冷却を維持する試みが行われました.なぜなら,PVの圧力が高いと,ポンプの圧力をもってしても注水することができないからです.

ところが,70気圧で,沸騰せずに278℃になってた水を,SR弁を開いて減圧すると,たとえば1気圧では,沸点が一気に100℃に下がります.すると,急激な蒸発が始まり,冷却水が減っていきます.ですので,海水注入が準備万端の状態でSR弁を開くことが必須なのです(しかしながら福島原発2号機ではそれがうまくいかなかった. 直前の3号機水素爆発の影響もあるようす).

縦軸[温度]に対する横軸[飽和蒸気圧]です.これは,横軸[気圧]に対する縦軸[沸点]とみることもできます.

そこで,本デモ実験では,圧力が高い状態から減圧されたときの沸騰の様子(これも減圧沸騰)を観察してみることにしました.
水を使う場合は,圧力が高くなりすぎて,とても簡易実験になりません.そこで,1気圧における沸点が78℃のエタノールを使うことにしました.沸点は100℃で2気圧程度になりますので,温度もその程度までの装置で大丈夫.ただし,エタノール蒸気は火災の原因にもなりますので,利用する量を少なくすることが必要だと思いました.メタノールは安いですが,有毒ですので,あまり気乗りしません.


装置は,当研究室で開発したプラズマ放電装置「ホローカソードグロー放電チャンバー」
通常,1/1000気圧ぐらいでプラズマを生成する装置です.>> 論文 

放電の様子(Youtubeデビューです)http://youtu.be/H68-dBj_fys

本実験ではこれを改修しました.電極をはずし,採光する真空窓(ICF70規格コバールガラス製)をつけました.真空窓は本来加圧用にはできていませんが,真空はゲージ圧(差圧のこと)1気圧ですから,2気圧程度(大気圧との差が1気圧)の実験なら問題ないと判断しました.フラスコは球形になっていて,減圧に強くても加圧には弱いので,危険だと思います(しかもエタノール容量が多くなってしまう).


圧力は連成計(減圧側,加圧側両方のゲージ圧が測れる).手持ちのものが±1気圧のしかなかった.我々は通常加圧では使いませんから..

蒸発に伴い,潜熱がうばわれ,温度が下がりますから,すぐに沸騰がとまってしまいます.そこで,エタノールの量を少なく,かつ装置の余熱を大きくすることが工夫を要する点だと予測しました.

そこで,容器内部にアルミのブロックを追加し,その目的の助けにしました.本実験で使っているエタノールは30-40 ccぐらいだと思います.
元から本実験用に作れば,もっとエレガントにできると思います.

以下,補足情報
 - 熱容量を維持するために
アルミニウム: 比熱 942 J/Kg/K  @100℃ (金属の中では比熱が大きい)
    エタノール :比熱  2400 J/Kg/K
    エタノール :   気化熱  3.93x10^5 J/kg @ 78℃
(ぶつぶつ・・・はじめ2kgあったとして,半量の1kgが気化すると,残ったエタノールが単純計算で15℃ぐらい下がる.....それでも蒸発が続く必要あるから,78+15 = 93. できれば100℃以上にはしておく必要がある? かといって圧力は2-2.5気圧ぐらいまでで抑えたい.この数値から,感覚的に,エタノールの3倍程度以上の量のアルミがエタノールの中に漬かっていれば,余熱の効果である程度の速度で沸騰を維持できるのでは・・・・・・)などと考えながら設計構想を進めました....
もちろん,伝熱をちゃんと計算すれば温度の時間変化が予測できると思いますが,もともと「ありあわせ」のもので組み立てたものですので....まあこれでやってみるかと......

----実験の様子-----
減圧前: チャンバー表面 145℃(逃げる分があるので,多少高めにしておかないと内部が暖まりません)
ポート  105℃  = エタノール沸点(気液平衡状態で温度が上がっていった印象です)
    気圧 2.57 atm (ゲージ圧1.57 atm推定)
減圧後: チャンバー表面 136℃
(ヒーター保持にもかかわらず下がってますので,潜熱が奪われたことがわかります)
      ポート  100℃ (余熱で高めに維持されています)
           気圧  大気圧
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movieをYoutubeに上げました(Youtubeデビューです).http://youtu.be/5HZjIE0puw4
バルブを開いて中のエタノール蒸気を外部に逃がすと.......


エタノール内部から,一斉に蒸発がはじまっているのがわかります.