2014-08-23

- 小学校4年生の夏休み自由研究(親の視点で)-

- 小学校3年生の夏休み自由研究(親の視点で)-
http://plasmankado.blogspot.jp/2012/09/summer-homework.html [1]
を執筆して2年たった.続編を書こう書こうと思いつつ,1年過ぎてしまったが,昨年の夏休み,4年生の夏休み自由研究の状況について備忘録を兼ねて書く.

<§1 テーマ選び>

今回のテーマ選びはさほど苦労はしなかった.転校して住む場所が東京から京都に変わったので,変わった場所での「セミの抜け殻」を調べれば,「とりあえず」格好はつく.仮に昨年と同じような進め方になっても,場所がかわっているわけなので,学術論文でいうところの「重投稿」には該当しない(^^;).先生も前年のものを知らない.

但し,全く同じ,というのは芸がないし,少しは成長したところをみたいものだ,という「親の淡い期待」もある.

めぼしい場所の検討はつけていたので,開始もやりやすいのだが,少し前年と状況は異なった.
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- 1箇所にいる数が少ない.
- 近所に分散している
- したがって,前年のように,夕方と朝と続けてとり,1晩の分をすべて集める(1日分の数を調べる),ということが難しい. .... もちろん,これは親が判断^^
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東京の個体分布はミンミンゼミとアブラゼミで多くの場所ではアブラゼミが多いらしい.しかし鳴き声に関して言うと,ミンミンゼミの一人勝ちである.テレビドラマで使われるのも決まってミンミンゼミで,東京(?)の夏を象徴するといってもよいだろう. 一方,京都のセミの個体分布は主にクマゼミであり,特徴的なミンミンゼミの鳴き声が聞こえない.さらにニイニイゼミもいて,鳴き声にバラエティがある.そこで,本年度は鳴き声にも着目させたいと(親が)思った. 会話の中でその方向にどう誘導するかが問題.

<§2 方法>  -----    テーマ修正を納得させる....

擬音語をつかっても,おそらく読み手には伝わらないだろう(しかし,このような観察も子どもにとっては大事なので取り組んでほしい).まず音をよく聞く(観察ならぬ聴察)ことに重点を置きたい.

音声の解析と可視化には,最近流行しているスマートフォンのアプリに着目した.内蔵マイクからの音声をサンプリングし,それをフーリエ解析して周波数のスペクトルに変換する.人間が普段つかっている音域は当然,このマイクのサンプリング性能がカバーしているはずなので,好都合である.この周波数スペクトルがセミによってまったく違うことに気づいた(...もちろん専門分野では常識なのだろうが,私は初めて認識した).それを子どもにみせると,(スペクトルの意味はわからなくても)視覚的に興味をもつようで,食いついてきた. ------>       「(私の心の声)よし,テーマ確定!(笑)」

前年同様,A3のケント紙3枚(前年は4枚)を2つ折りにして,A4で12ページ分のブックレットにしたものを作成.ページ毎の配置を考える.

できれば,鳴き声(周波数)だけでうまく攻めたいのだが,本人の抜け殻へのこだわり(笑)があって,抜け殻の調査結果は必ず入れたいと譲らない(相変わらず誰に似たのか頑固である).


そこで,「場所による違いを抜け殻で,時間による違いを鳴き声でやったらどうか」と持ちかけたら,乗ってきた(笑).

<§3 具体的作業〜ここからが本番〜>


○場所の違い:
抜け殻を調べる.前年の作業を覚えているので,抜け殻あつめもスムーズだ.レポートでは簡単に昨年調べたことをレビューすることで定着も期待できるだろう.

いざ分類をやってみると,京都では大部分がクマゼミなので,場所によってあまり特徴的なことが言えない.
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東京: ミンミンゼミ ~ アブラゼミ >> ツクツクボウシ
京都: クマゼミ >> アブラゼミ  >>  ニイニイゼミ, ツクツクボウシ(調査外の場所)
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前年の研究がなければ,それでも形になったのかもしれないが,親の好奇心がそれを許さない(笑).もっと詳しくしらべれば,ツクツクボウシなどの生息域もわかると思ったのだが,その調査が大変になることは(大人には)よくわかる....ので,やんわりとその方向を避ける...

セミの抜け殻は具体的な「物」があるので,数を数えたり,分類したりした結果の整理が比較的容易である.しかし,鳴き声をどう表現するか.これはなかなか難しい(子どもにもよるだろうか).時間帯によって主に聞こえる鳴き声も違うので,なにかこの音を小4の力量内で「可視化」できないか,と(親が)考えた.

○時間による違い:
 これは,大変おもしろかった.昼前にクマゼミの声がなくなり,やがて,ニイニイゼミの声が聞こえる.そして,アブラゼミが鳴き始める.聞いていても不思議であるが,周波数スペクトルにするとその違いがはっきりする.あとは,音とスペクトルを「子どもらしく」どう関連づけるかだろう.

 周波数とは「音が空気中をつたわる時,1秒間に何回空気が振動するか」と教えたら納得したようす.

そこで,聞いた音を文字で表現するのと,その音を周波数スペクトルで同時に表現するように書かせてみた.
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 クマゼミ  「ヴィヴィヴィ」    2k-10kHzでモコモコしている
 ニイニイゼミ 「ヂー / 音程が時々下がってまた戻る」 6k-8kHzの間でピークがある.
    アブラゼミ「セリセリセリ」    6kHzと14kHzに2つピークがある.
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セミの鳴き声の周波数スペクトル




 周波数はスマートフォンの写真にセーブして,それをデジカメプリントで写真化したものを渡した.それを自分で切り貼りさせた.我が家はいまのところ,子どもにスマートフォンを持たせることには反対なので,このようにした.パソコンに取り込んで,それを印刷することもできたが,写真を自分で切り貼りしたほうが,与えられた,やってもらったという意識が小さくなると思ったからだ.


(ちなみに,ミンミンゼミの鳴き声の周波数帯域もクマゼミに近い.温暖化ともない,暑さに弱いミンミンゼミが北に追いやられている,という話も聞くが,この周波数の類似性によって両者が共存できない/しにくい,というこもあるのかもしれない.ミンミンゼミに「やつら(クマゼミ)耳障りじゃないか」聞いてみたいところ^^)

京都も山に登ると,ミンミンゼミの鳴き声が聞こえた(ヒグラシもいた).絶滅ってわけではなさそうである.

<§4 感想の書き方>

いかに考察や感想を書けるかが,レポートの質を高める大きな要素になるのだが,我が子はそれがなかなか・・

感想を聞けば,「かしこいなあ」と思ったとのこと(この感想を引き出すだけでもひと苦労^^).理由は「セミの仲間がどこにいるか分かりやすいから」.. このあたりは何を想像してい表現しているのか思い知れないが,子どもらしいと言えば子どもらしい(笑).

<親の感想>

自由研究にはいろいろな「ネタ本」が出版されているようだが,それを研究レポートの形に仕上げるにはなかなか子どもの独力では難しい.課題形式,質疑応答形式にすすめる必要がある段階だろう.個人差もあると思うが,独力での自由研究は,まだ小4でも尚早な気がする.

最近(2014.8)話題になった
「高校生の科学等に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-」
[ http://bit.ly/1voig8lの「概要=報道発表資料(PDF) 図21」によると,日本の子どもは他の三国に比べ,早期から自由研究をやっている.これは小中学校の夏休み課題として定着していることを意味しており,本来,創造性が発揮できるであろう高校以降に研究体験をする割合が圧倒的に少ない(リンク:http://twitpic.com/eam1n5).

2014.8 高校生の科学等に関する意識調査報告書図20,21 「自由研究」に関する日米中韓の比較... on Twitpic
2014.8 高校生の科学等に関する意識調査報告書図20,21
 「自由研究」に関する日米中韓の比較... on Twitpic




現在,小学5年生での夏休み自由研究進行中である.例によって,夏休み終了直前,まだまだ完成にはほど遠い(笑).5年生になり,やっと独力で作業できる段階にきているようだ.それでも独力で筋道をたてるには至っていない.もし独力で研究を成し遂げられるような教育を目指すなら,私見ではあるが,小学校高学年頃から少しずつ研究レポートの形式に慣れさせ,高校ぐらいでやや本格的なレポートが書けるような指導が適切な気がする.それまでは,親が助言を与えながら,科学の現象や用語に興味をもつこと,科学実験・観察へのアレルギーを無くすこと,文章に書くトレーニングをすること等に心がけてはどうかと思う.

以下小学校4年時の自由研究のスキャンPDFをアップする.ただし,人名,地名は伏せてある.
「**にいるセミの鳴く時間に関する研究」
http://bit.ly/1nivhHw


小3編[1]で,「セミのぬけがらの研究」でのドタバタ劇を通じて「自由研究は,子供のため,というより,親が子供の全体的な達成度(=現実:笑)を知るいい機会でもあるのかもしれない.」と書いたが,あらためてそう思った.

前年にくらべ,だいぶ筆が進むようになってきた.それなりに成長しているものだ(してもらわないとこまる).しかしまだまだ「研究」っぽい内容を,自主的にテーマを選び自力で完成させていける段階には至っていない. ---- 逆に自主的にやるようになれば,おそらくこのような論評の機会もなくなるであろう^^.       (文責:plasmankado)